野菜だけのサラダでも満たされるということ

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いい素材を追求する。野菜を栽培する側も、料理として使う側も。このお互いのマッチングがあってこそ、初めて極上の一品ができ上がるのだ。茨城は筑波山のふもとで、「食べておいしく、体が喜ぶ」野菜を作りだすモアーク農園がある。対して、東京は恵比寿。舌の肥えたお客様が日々来店するレストランQ.E.D.CLUB。大西総料理長は、素材の味を生かす腕の持ち主だ。食べ手だけではなく、野菜自体も喜ぶということを教えてもらうことになる。

いい素材を最善の形に導く
それが料理人の仕事

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ー野菜がおいしいと言われることも多いと聞きますね。

大西さん  メインの肉や魚の付け合わせだけではなく、野菜はれっきとした主役です。年間通して送ってもらっている茨城県つくば市のモアーク農園の野菜は、年間を通じてベビーリーフをお願いしています。それに加えて、季節ごとに収穫できる野菜をおまかせで送ってもらっています。このように、大きな規模のレストランですから、多くの方から食材の紹介を受けますし、入ってくる情報は正直多いです。モアーク農園のベビーリーフ食べたことありますか? きっと、これを食べたら「ほかとは違う」って思いますよ。多くのベビーリーフは水耕栽培が多いですが、モアーク農園のものは土耕による有機栽培。この栽培法もあるのでしょうか、初めて食べた時は成長途中とは思えぬ力強さに驚きました。生長した大きな状態の野菜にも負けない味わいですよ。季節にもよりますが、今の時期は赤からし菜、ターサイ、赤軸ほうれんそうを送ってもらっています。しかも同じベビーリーフでも、時期によって味わいが変わるんですよ。寒い時期は、成長に時間がかかる分、味が濃くて葉も厚い。ベビーという言葉がつくので、未熟な状態みたいですけれど、しっかりと主役をはれますからね。肉や魚の添え物ではなく、たっぷりと盛ってサラダにすると喜ばれますよ。

sp06_02「あいなめのポワレ 3種の有機野菜ソース」。中心にはカリッと焼かれたアイナメ。それを飾るのが、モアーク農園のかぶ、じゃがいも、ほうれんそうを使った3種のソース。ベビーリーフは、グレープシードオイルとはちみつ、塩、こしょうで作ったドレッシングをまとって。

ー以前と比べて、素材に関して知識のあるお客さまも増えたのではないでしょうか。

大西さん  その通りですね。例えば、私がこのレストランに入店した10年前と比べても、特に野菜に関しては、知識がある方が増えていますね。料理をお出しした際に、どんな野菜で、どこで育ったのかなど、多くの質問を受けますよ。だから、料理人も使う素材の知識はきちんと持っていないといけません。野菜だけではなく、肉や魚も、当たり前ながらいい素材を使います。ですから、調味料ひとつひとつ意味があっての選択です。例えばサラダの場合は、グレープシードオイルやシャンパンビネガーをよく使います。オイルは、オリーブオイルだと香りが強すぎて、野菜の持ち味を最大限に引き出すには、存在感が大きすぎる。グレープシードオイルは香りも味もないので、最高の脇役に徹してくれます。シャンパンビネガーは、多くある酢のなかでも酸味がきりっと立つので、野菜と合わせると抜群です。肉や魚を焼く際にも、これまた香りが邪魔をしない米油を使うなど、あくまでも素材が主役で、そのよさを引き出すのが料理人の仕事だと思っています。

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ー今年からマルシェイベントも始まったとか。

大西さん  今年の1月から月に一度、第三水曜日にマルシェを兼ねたランチイベントを始めました。元々は「いいものだから、もっと多くの人にその存在を知って欲しい」というシンプルな想いから始まったんですよ。ランチメニューに取り入れた素材を、マルシェという形で素材そのものを知っていただく機会です。生産者の方がいらっしゃる場合もありますよ。食べておいしい素材。この素材はどんな人が、どんな想いで作っているのか。それを知ることで、食べるときにもっとおいしく違った感動も生まれると思うんです。気に入ったものは、購入してご自宅でも気軽に楽しんでいただけますよ。平日開催で、まだまだこじんまりとした規模ですが、私達キュー・イー・ディー・クラブのお気に入りのものが、お客様や恵比寿のご近所の方から、じわりじわりと広めていけたら嬉しいですね。

古からの農業の教えに沿い
自然にも体にもやさしい野菜を作る

ー大阪出身だそうですが、茨城の地で農業を始めようと思ったきっかけは。

西村さん  大学卒業後は、外資系の穀物商社や証券会社などに勤め、日本だけではなく、北米など海外の地の食糧事情や、農業を取り巻く状況を目の当たりにしてきました。また、職業柄、外食をする機会が多かったのですが、いわゆる高級な食事であっても、どこか「体が喜んでいない」感覚がありました。また、日々忙しく過ごすなか、自然と「自然と調和した生活を送りたい」という想いに導かれ、農業を生業とすることを決めました。自然を相手とするわけですから、農業をするのであればかつての日本でも行われてきた「草農法」を取り入れた有機栽培をしようと、これだけはすぐに決まりました。つくばという地だったのは、偶然の流れです。耕作放棄地、草農法に使用する草を入手できる地であることなどを条件に挙げて探していたところ、偶然、かつて農業高校として使われていたこの地に出会ったのです。

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ー「草農法」、「Aランク有機野菜」など、独特の言葉がありますね。

西村さん  草農法は、日本だけではなく元々、世界中で取り入れていた農法です。この辺りに生えている草に、自然な素材を食べて育った鶏の糞などを加え、発酵させて堆肥を作り、土に混ぜて野菜を育てるのです。3カ月以上かけて草をたい肥化させ、土の中に入れ込むことで、その養分が野菜にも移ります。草も時間が経つと、見た目は土のようになり、でも持つと軽い。その草を混ぜ込んだ土はふわふわですよ。こうして育てた野菜を、自社で分析してみたところ、栄養価も高いというデータが出ています。食べておいしいという目的以外に、健康でいようと思って野菜を食べることもありますから、きちんとした野菜を作りたいと思っています。おいしくて、なおかつ栄養価が高いことや、農法に歴史的な裏付けがあることなど、独自に掲げた4つの項目の基準を満たした野菜を「Aランク野菜」って呼んでいるんです。

 

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ーベビーリーフが主力でしょうか。

西村さん  ほうれんそうやビートを始め、十数種類の野菜のベビーリーフを年間通して出荷し、モアーク全体の8割を占めます。それ以外に、冬場であればじゃがいも、玉ねぎ、にんじんなども出荷しています。ベビーリーフは、生長途中の栄養が詰まっていることに加えて、サラダなどにすれば一度にたくさんの種類を食べることができることが魅力なんです。レストランやホテルなどの飲食店で使っていただくことが多いのですが、ご要望に応えて、いわゆるベビーリーフよりもさらに小さいマイクロリーフと呼ぶサイズで出荷することもありますよ。それ以外にも、今は飲食店から頼まれて作る品目もありますよ。どういう素材が欲しいのか、これは常に気を配っています。

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Q.E.D.CLUB 総料理長 大西孝典さん

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株式会社 キュー・イー・ディー・クラブ取締役総料理長。高校を卒業後フランス料理の道に進み、国内のホテル、レストラン勤務後に渡仏。フランス各地のレストランで修業後、帰国し、東京都内のレストラン勤務を経て、キュー・イー・ディー・クラブに入社。フレンチ部門の料理長を経て、取締役総料理長に就任。調理学校で調理の指南をすることも。

モアークグループ(盛田アグリカルチャーリサーチセンター) 代表 西村松夫さん

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