和魂洋才で開花した 蓮根のあたらしい魅力

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煮物、きんぴら、しんじょやつくねの具等々、れんこんと聞いて思い浮かぶ料理は和食のイメージがつよい。しかし淡白な味と、調理法によって幾通りにも変化する質感は、料理の素材として大きな可能性を秘めていた。イタリアンシェフの手により華麗に花開いたれんこんの新しい魅力。極上のれんこんを作る三兄弟と、野菜の味を更に引き出すレストランとの結びつきが、洋皿の上においしい幸せを咲かせている。

直接畑に行って感じる生産者の愛情を
一皿に込めてお客様へ

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ー店名の前に「野菜とパスタのお店」というキャッチコピーがついていますが、お店のコンセプトを教えてください

高地さん  都内を中心に現在12店舗あるAWkitchenは、『日本全国の地域に根ざした旬の食材をゆっくり味わい、訪れたお客様が心から満足し、笑顔でドアを後にしていただきたい』と願うパスタハウスです。自慢の手打ちパスタと同様にたいせつにしているのが、旬のお野菜。季節毎に最もおいしい野菜を生産者から直接仕入れ、各店舗の店長と料理長が中心となって、地域性やお客様の嗜好を考慮しながらメニューを立てています。店で使っている野菜はすべてオーナーシェフが全国の畑を巡り、農家さんと直接お話しをしながら栽培状況を視察して選んできたものばかりです。元々野菜が好きでこだわりがあったのですが、おいしい野菜を探すという目的はもちろん、いいものを作っている農家さんを応援したいという思いもあり、料理を通じて多くの方にその存在を知っていただいていることから「畑の伝道師」と呼ばれています。私たちスタッフもオーナーシェフと同じ気持ちで農家さん達とお付き合いさせていただいており、どんな環境で育ったか、どんな思いで育てているか、そんな背景も含めて皆さんにお伝えしたいと思っています。

aw_02宮本三兄弟のどっさり蓮根とアンチョビのガルガネッリ(1500円)。ガルガネッリは筒状のショートパスタ。アンチョビ、ガーリック、蓮根のみじん切りをオリーブオイルで炒め、アサリのダシでソースに仕上げた。炒めた蓮根のモチモチ感、スライスしたシャキシャキ感、素揚げしたパリパリ感、一皿で3つの食感が楽しめる。

ー宮本三兄弟のれんこんの評判はいかがですか。

高地さん  宮本さんのれんこんを使って3年になりますが、もううちではとても有名です。新れんこんの出始める7月末くらいから、お客様がとても楽しみにしていらっしゃいます。宮本さんのれんこんは一口食べて誰もが分かるくらい違うんです。出始めの新れんこんは特にですが、生で食べてもシャリシャリと甘くて梨のようですし、火を通すと今度はモチモチとして、糸がビューッと引くぐらいすごい粘り気が出ます。生の薄切りに塩昆布ドレッシングをかけたカルパッチョや、歯ごたえが出るようにタテ切りにしてフリットし胡椒を効かせたり、その時期によってさまざまな調理法でお出ししていますが、2月の今ごろですとパスタでご提供しています。生のシャリシャリ、炒めたモチモチ、揚げたカリカリ、3つの食感が一度に味わえるこの一皿は、宮本さんのれんこんと出会ったからこそ生まれたメニュー。お客様にもとても人気があり、「れんこんのパスタ始まりました」とお知らせすると、喜んで来てくださいます。

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ースタッフの皆さんも畑へ視察に行くことで、何か変化はありましたか。

高地さん  飲食業で労働時間が長いなか、皆時間を見つけてはお取引先の畑へ行って、農作業を体験させてもらったりしています。シェフ達は畑へ行くとこれで何が作りたいとか、あの素材と合わせてこんな味付けでとか、アイデアがぽんぽん浮かんでくるみたいですね。宮本さんの所へはだいたい新れんこんの時期にお邪魔しているのですが、手探りで傷つけないようにれんこんを掘り出すのは本当に難しくて、この作業を真冬でもされているのかと思うと、よりたいせつなものに思えてきます。他の野菜も同様に畑の様子が目に浮かぶので、届いた段ボールを開封するときの嬉しさが違ってきますね。農家の方が苦労して、愛情込めて作られていることをお客様にもお伝えすることで、それぞれの野菜にファンができたりもしています。これからもおいしくて新鮮な驚きのある料理と、寛げる空間でお客様をお迎えし、価値ある野菜を多くの方に知っていただきたいと思います。

兄弟それぞれの得意分野を生かし
れんこんの質と人気を高めていく

ー三兄弟で家業を継いでいますが、皆、以前は違う職業に就いていたそうですね。

宮本さん  私が体育教師、二男の昌治が調理師、三男の昭良は工場で働いていました。教師という職業は、ある意味では安定はしていましたが、少子化が進む背景もあり“必要とされている”ことに飢えていました。転職という文字も考えていた頃、弟が農業を手伝っている話を聞きながら兄弟会議をしました。当時、農業は今以上に斜陽産業であるという認識が兄弟三人ともに強かったですね。しかし、両親は私たちを立派に育ててくれているので、働き方しだいで十分に暮らしていけるだろうと三兄弟が一致団結し、今に至ります。今でこそ、こうして農業を楽しめていますが、かつては継ごうとさえ思っていませんでした。父親の行っていることが「作って、市場に卸す」そこで完結し、自分が作ったものに対して評価も何もないことに、私がジレンマを感じたんでしょうね。最初の3年間は、父親の言われるがままに、作業をこなしていました。ある程度、自分でも仕事ができるようなった5年目に、父親は稲作をメインにし、私達兄弟がれんこん専業と分け、それぞれ独自の方法で進むことに決めました。

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ー都内の多くの飲食店でもひいきにされていますね。

宮本さん  ありがたいことに、周りの人や、今まで食べてくれた人の紹介や口コミで、たくさんの飲食店が使ってくださるようになりました。現在は直売所と飲食店にも卸していますが、食べた方から「れんこんを初めておいしいと思った」という声をもらうなど、食べた方から声が届くことが嬉しいですね。生産者である自分達と、飲食店、お客さん。皆の声が通る関係が理想ですよね。(有)イートウォークが展開する飲食店でも多く使っていただいています。時間があれば直接お店に食べに行きますよ。自分が作ったれんこんが、どうやって変身するのかを知るのは楽しいですね。おいしいし、嬉しいし、驚きますよ。AW kitchenでは、スープに始まり、ソーセージやパスタ、デザートまで入っていて。れんこんのモンブランが出てきたときは驚きましたね。代表の渡邉さんをはじめ、スタッフの方が見学に来てくれることもあります。その勉強熱心さには頭が下がります。

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ー今後のれんこん三兄弟、新たなことを始める予定はありますか?

宮本さん  まだ未定で夢ですが、海外に輸出をしたり、ベトナムやカンボジアなどの東南アジアに現地ファームを作るのもありなんじゃないかと。また、私たちの蓮田もある霞ヶ浦の周り一帯は、蓮田の面積が日本一ですが、れんこんを使った加工品が少ないように感じます。特にお菓子ですね。せっかくなので、自分が育てたれんこんから、稲敷を代表するお菓子が作りたいです。今後どうなっていくのか自分でも分かりませんけど、楽しみなことは確かです。

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AWkitchen 東山本店 店長 高地美和さん

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2005年に東山本店に入社。その後新丸ビルのAWkitchenの立ち上げ、表参道店の店長を経て、昨年秋より店長として東山本店に再び就任した。お客様の多くが食と健康に対する意識が高く、野菜についても博識である。自身も野菜ソムリエの資格を持っているが、そんな方達にご満足いただけるメニューを考案するため、野菜の勉強と食べ歩きを日常としている。

株式会社れんこん三兄弟 代表取締役 宮本貴夫さん

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れんこん栽培農家の三兄弟の長男。大学卒業後、体育教師として働いていたものの、家業である農業の未来を憂い、一念発起をして家業のれんこん栽培の道へ進む。時を同じくして、それぞれ異業種に就いていた弟二人も農業に転向。10年前に農業を始め、3年前に法人化する。合言葉は「れんこんの穴から未来が見える」。