選ばれし極上の果実

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説明をするのは野暮なほど、言わずと知れた高級フルーツの専門店。明治27年創業の銘店は、そのプライドにかけて本当においしい果物だけを扱っている。専門のフルーツマイスターによって選び抜かれた果物、その至高の味を求めて、国内外から人々がやってくる。その誰もが当然のように期待するのは、ここなら間違いないという、圧倒的な信頼感だ。

創業以来変わらぬ想い
最上級の果物を最もおいしい時に

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ー銀座千疋屋さんでは、取り扱う商品をどのように選んでいるのですか。

石部さん  当店は「旬」と「食べ頃」をたいせつにしています。果物は同じ1本の樹でも、採れる時期と熟度によって味に変化が生じます。昨年良かったから今年も同じという保証もありませんので、全ての果物は毎年見直しです。全国を巡り、その時期最もおいしいものを吟味して店頭に並べています。いちごを例にとると、あまおう、べにほっぺ、とちおとめなど、それぞれに違う個性を持つ様々な品種があります。それらをすべて一緒にして、いちごの中でどれが一番とは決められませんね。10月から採れる早生のものから、12月になってやっと採れ始めるものもありますから、その時期最もおいしい旬を迎える品種はどれか、更にその品種のなかで最もおいしく作られているのはどれか、というふうに厳選しています。社員は皆、果物にかけてはスペシャリスト、豊富な知識を備えた目利きばかりですが、実は仕入れ担当は代々店に1人だけ。現在は私がその役割を担っております。人によって美味しいと思う感覚は違いますから、すべての仕入れを1人の人間が行う方が、銀座千疋屋という看板の味を守りやすいのです。先輩から伝授された味覚の基準を元に、それぞれの果物の個性が際立つ、バランスのとれたおいしさを尊重して、仕入れ先を決めています。

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ーでは銀座千疋屋さんにとって、今のところとちおとめの最高峰は村田農園のいちごということになるのですね。味以外にも決め手となったことはありますか?

石部さん  そうですね、村田さんのいちごを置かせていただくようになって3年目ですが、濃くてバランスのとれた味は評判も良く、昨年に引き続き今年も、フルーツパーラーで村田さん家のいちごを使ったいちごフェアを開催し、お客様に喜んでいただいています。でもおっしゃる通り、味が良いだけではお取り引きには至らないんですね。当店の商品は宮内庁御用達で、賓客をもてなすレセプションなどでもお使いいただています。一時にまとまった量が必要な場合もありますので、そうした要望にも応えていただける、ある程度安定した生産体制が整っていること。また、流通の際に傷みが出ては当店の品物として成り立ちませんので、細心の注意が必要となります。そのためのパッケージ仕様など、総合的に商品をプロデュースするということをご理解いただき、価値を高めるための工夫や協力をしてくださる農家さん。つまりは、生産者と販売者の視点を併せ持ち、改善のための変化を厭わない方でないと厳しいです。そうした要素を満たし、なおかつ味がトップクラス、となると、なかなかに難しいのです。果物には作ってる方の人柄が表れるのですが、その点村田さんは、本当に真面目な方。村田さん家のいちごの味は、当店にとっても特別な存在です。そして村田さんは東京で何を求められているか、よくわかっていらっしゃる。こちらからの要望をきちんと理解し、それに応えるための努力をしてくださいます。

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ー村田さんは村田さんで、銀座千疋屋さんからのご要望にお応えするための努力が、結果、生産者としてのスキルを上げていることに感謝をされています。

村田さん  3年前の秋口、千疋屋さんから仕入れたいというお話しをいただきました。こちらとしては突然のことで驚きましたし、うちのいちごで良いのだろうかとも思いましたが、実は石部さんはその前の年、シーズンの始めから終わりまで、ずっとうちのいちごを追って下さっていた。それを踏まえてのお話しだということをお聞きして、嬉しかったです、本当に。
2年目には震災復興支援としていちごフェアの提案をいただき、「本当にできますか?大丈夫ですか?」と念を押されたのに、軽い気持ちでお受けしてしまいました。でも千疋屋さんの求める品質が量的にまとまらない日もあったりして、たいへん反省しました。それでも今年、またフェアを開催していただき、何としても期待に応えたいと思っています。いちごの質だけでなく、詰め方やパッキング資材に至るまで、こうして石部さんからの課題を解決するためにさまざまな工夫をすることで、全体的に質が上がってきているのではないかと感じています。少しでも良いものを作るために、何をすべきか。そこに大きな弾みをつけて下さったのが千疋屋さんだと思っていますし、このご縁が当農園にとって大きな転換期になっていることに、心から感謝しています。

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ー銀座千疋屋のバイヤーとして多くの生産者を見てきたなかで、感じることなどありましたら、お聞かせください。

石部さん  産地に行くと色々なものを目にしますが、私どもの店に置きたくなる本当に良い品物って、そんなに多くはありません。ですから常に探している状態です。今は味は届かないけれど、やはりそのお人柄に惹かれるのでしょうか、いずれお取引できるようになれれば良いなと思いながら、気にして見ている農家さんはいらっしゃいます。日本全国歩いていて、特に若い農家さんの多くが、現状に不安を感じています。流通経路や農家としての在り方等に疑問を抱いている意識の高い方達は、あらゆる点を改善していずれ頭角を現していく可能性を秘めていると思います。逆に「これはうちで採れた最高の物です」と言って持ってこられたり、送ってこられたりする方も多いのですが、大概はうちの店をよくご覧になっていない。そうされる前に是非うちの店に来て、どういうものを置いているか見ていただきたいと申し上げています。何度も足を運び、並んでいるものやお客様の様子を見て、この店はこうだと研究した結果ならわかるのです。しかしご自身の中で最高だと思う物も、需要のないところでは魅力的には映りませんから。
いま私がお付き合いしている農家さんは、皆さんこちらへ足を運び、よく研究されています。多くの生産者の方と接する中で感じることは、まず、自分は何をしたいのか、その方向性を示すことが必要かと。量を売りたいのか、品質でトップを目指したいのか、どこへ流通させたいのか。その上でターゲットとなるマーケティングを徹底的にするということですよね。客が何を求めているのかをしっかりと見極め、望まれるものを望まれる形で提示する、そのことが重要ではないかと思います。

senbikiya_05『「村田さん家のいちご」フェアー』で提供されているメニューの数々。手前は『「村田さん家のいちご」ミルフィーユ(1,575円)』。奥は右から『「村田さん家のいちご」ショート(1,050円)』、『「村田さん家のいちご」フレッシュジュース(1,050円)』、『「村田さん家のいちご」パフェ(1,575円)』。フェアは4月中旬まで開催予定。

銀座千疋屋 販売事業部 仕入長 石部一保さん

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果物を扱う業界に従事して20年以上のキャリアを持つ。市場、百貨店の果物売場を経て、6年前に銀座千疋屋に入社。長年に渡り研鑽を積んだ目利きの目は、名産地などの既成概念にとらわれることなく、おいしさ最重視の選択をしている。

■村田農園 代表 村田和寿さん

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茨城県鉾田市のイチゴ専門農家。バランスが良く、コクのある味わいは、いつしか「村田さん家のいちご」と呼ばれるほどの人気に。誠実で研究熱心な職人肌。イチゴに対する愛情と真摯な姿勢が妥協のない最高の品質を生み出している。